鶯のこえで目が覚めた。

朝、鶯の声で目が覚めた。
「ホー、ケキョ」。何かが足りないよ。「ホー、ケキョ」。何度も何度も練習するもんだから、思わず笑えた。そしてそれはとても幸福な気持ちだった。
春になった事。カーテン越しの明るい日差し。鶯の声で起きる事。そんなに多くは望まないし、これだけで充分、なんて贅沢な事だろうと思う。

大津の叶匠壽庵さんの梅林は、遅い春にようやく見頃を迎えた。
1000本梅の緩やかな斜面に、訪れた方々らのお願い事が書かれた短冊が揺れている。
どれもささやかな願い事ばかり。家族の健康を祈り、幸せを祈り、せいぜい商売繁盛。きっと、何か書けと言われれば、人が真っ先に思いつくのはこれくらい、ささやかで、優しくて、そんなに多くを望んでいる訳じゃ無いんだ。

難しい事など望まず、出来るだけ穏やかに、生きてゆければいいのにな。