東福寺の涅槃会。茶白の猫に誘われて。

涅槃図。

お釈迦様のご臨終のお姿と共に、沙羅双樹、悲嘆にくれる諸菩薩、仏弟子、鳥獣などが描かれているという事なのですが、東福寺の涅槃図にはその中に珍しく猫も描かれているというお話を知って、涅槃会へ参りました。
この機会に、まだ登った事が無かった特別公開中の山門と、龍吟庵もあわせて。
本堂に大きく掲げられた視界いっぱいの大涅槃図には、悲しみにくれる象の足下に小さな茶白の猫。そして天井には堂本印象による蒼龍図が描かれています。また、山門の楼上内部には、極彩画が薄灯から浮かび上がり、お釈迦様と十六羅漢像がおられました。双頭の迦陵頻伽が舞う極楽浄土の絵の中に居ると、ふと、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」の世界を思い出しました。お年寄りも若い人も、これらの前ではふわりと膝をついて背中を丸め、静かに手をあわせるのです。とても美しい光景だと思いました。
・・・と、ここで記述したものは全て、このアルバムにはありません。何故ならば撮影が禁止されているからです。私は、それも良い事だと思いました。昔、ある写真家さんに、車を走らせていたらハッとする光景を目にして、けれどカメラが手元に無かった事を話したら、「そういうのをいつでもとりあえず撮るんじゃなくて、撮れない事、撮らない事、心でしっかり記憶するのも大事だったりするんだよ」と言われました。写真に関して教わった言葉の中で、今も大事に覚えている言葉のひとつ。当時はコンデジももちろんカメラ付携帯も無かった頃ですが、今尚もって響きます。
紅葉の時期ともなると大勢が過ぎる人で賑わう東福寺ですが、また、時期を外して是非とも、ありがちな写真の風景には収める事が出来ない、東福寺ならではの世界観の中にも入ってみては、如何でしょうか。


谷口菜穂子写真事務所
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