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雪に包まれた新潟市歴史博物館へ。


 先週のこと。
 冬とは思えない暖かな陽気からスタートした年始もあれは幻だったのか。やはり冬らしい冬の到来、京都市内でも南の方、普段ならまず昨夜雪が降ったとて翌日の午後には解けて無くなってしまうのも常な地元ですら道路に雪が残って凍るような中を、更に分厚い雪雲にすっぽり覆われ、風雪暴れる新潟まで仕事に向かった。

 と言っても当初の旅程は一旦白紙。道路もダメ。新幹線もダメで移動手段は飛行機一択。それも都合2回フライトがキャンセルされ、3度目の正直でなんとか飛んでくれた新潟行きの飛行機。数十分ほど上空で待機し、雲の切れ目を狙って着陸しますと努めて朗らかにおっしゃる機長アナウンスがとても心強かった。予定時間は大幅に越えたものの無事着陸。それから、雪国育ちで運転も頼もしいクライアントさんのレンタカーに便乗し、目的地まで向かった。
 取材先の皆さんも今か今かと待ち構えて、あたたかく迎えて下さった。雪の中が歩きやすいよう、長靴やダウンジャケットも用意して下さった。一方、雪を舐めてかかっている無知な私のキャリー付きヘビーなカメラバックほど、雪道に使えないものは無い。そしてよちよち滑らないよう歩くのだけで精一杯。そんな訳で、機材はひょいひょいと、雪道に慣れた地元男性陣が運んで下さった。もうこれは精一杯、喜んでもらえる絵を撮るしかない。

 冷たい雪に包まれた、白いお米に清い水で造られる日本酒の故郷。お陰様で、また本当に良いものが見れた。なにもかもに感謝。


 当日の帰路の新幹線は勿論でストップになり想定どおり新潟市内泊。翌朝、帰る前にここまでせっかく来たのだから何か一つ、新潟の歴史文化を知るべしと向かったのは、明治元年、神奈川・函館・長崎・兵庫と並んで開港された五大港の一つである新潟港の運上所跡。当時の洋館建物等がいくつか残っていたり移築されて整備されている公園施設「新潟市歴史博物館」があるとのことで、新潟駅バスターミナルからバスで向かう事にした。

 本来なら市内を周遊する一日観光バスが最寄りで便利な筈も、平日は1時間に一本きりしか走ってないので普通のバスで向かう。が、朝の道路は見渡す限り真っ白で、歩道にはこんもり膝丈まで雪が積もって足跡すらない。そこに降り続ける重たい雪。バスの運転手さんが「最寄りのバス停から普通に歩けたとしても10分はかかりますよ」と、足元に目をやりながら心配そうに言ってくれる。

 ところがバス停を降りたら、50メートルほど先を歩く、小型耕運機サイズの手押し除雪車でお爺さんが黙々と美しい一本道を作ってくれている最中だった。多分、この辺りに暮らす方で、こんな冬の朝は毎日毎日、みんなのために歩道の除雪をしておられるのだろう。私はただ、その道をついていく形で、昨日取材先で教えてもらった雪道での歩き方に見習ってよちよち歩く。歩きながら、朝のネットニュースに上がっていたフォーブスの記事(※)ーボンジョヴィのボーカリストであるジョン・ボン・ジョヴィが奥さんと一緒にもう10年以上営んでいる無料食堂の話を思い出していた。ボンジョヴィと言えば、ハードロックやメタル全盛だった高校生の頃にやたら聴いたものだ。そして自分なんて、同じく高校生の集まるライブでコピーバンドを披露してみんなに喜んでもらうのがせいぜいだったのに。。。あの頃のロン毛のボーカル(そして途中にはロマコメドラマのイケメン俳優にもなり)は、今や大変な道を切り開いて社会還元の要のひとつとして生きている。言葉に芯がある。凄いな。心打たれていた。そしていまだに何やってるのよ私、今やコピーすら出来てないやん、とも。

 そんな朝イチのニュースを反復しながら、遠く白い粉雪を巻き上げながら除雪車を押す孤高のお爺さんも、立派に地域の社会貢献に努める、確実にこの街のボンジョヴィだ。そう思った。


ジョン・ボン・ジョヴィ夫妻の営む「無料食堂」記事リンク

 

と、言う訳で、写真をシェアして誰かのちょっとした時間潰しのネタになるのでせいぜいの事しか自分には出来ないけれど、新潟にはまた、こんな素敵なところがありますよ、と、知らない方にお届けできたらせめても嬉しいです。

それから、何かのお返しは出来ないまでも、誰かに助けてもらったり、支えてもらっていたりする常日常を、自分自身でせめて、気づいていられるよう、また感じていられるように。
それでは以下。 


旧新潟税関庁舎

なまこ壁にベンガラ塗装が雪景色に映える旧税関庁舎。

明治2年建築。この地で昭和41年までその役目を努めた建物は、今や五大港で唯一現存する税関庁舎で国の重要文化財に指定されている。日本建築の技術を用い、洋風を真似て表現しようとした「擬洋風建築」だ。


博物館本館

明治44年建築の新潟市庁舎の外観デザインを取り入れた建物で、現在は「水の都」新潟の歴史や文化を伝える常設展示やミュージアムシアター、企画展展示場などの役割を担う。訪れた際もちょうど、地元子供達だろう校外学習が行われていてひととき、子供達のカラフルな色彩が賑わいを見せていた。


旧第四銀行住吉町支店

昭和2年、当時新潟経済の中心地であった住吉町に建築された銀行建物で、平成14年から2年かけてこの地に移築、復原された。

鉄筋コンクリート造の二階建て・新古典主義様式の建物で、丁寧に復原された様子もパネル展示で知ることが出来る。


石庫(いしぐら)

課税を保留したまま輸入品を一時保管する「保税倉庫」として建てられた初代は明治2年建築。現在のものは老朽化による解体後の復元によるもので昭和57年建築。


 

 

以上。

どうやら建屋を挟んだ大きなオープンエアな空間は、当時の様子を再現された運河や芝生が広がっているようです。
きっと春になるとまた、すぐそばの海辺の船の汽笛に耳を傾けながら、爽やかな海風にあたって心地よい場所でしょう。

雪景色のモノトーンだからいっそう、なんだか異国情緒を感じる近代建築がフォーカスされる今の季節も魅力的ですが、

また違った時期にもぜひ、ゆっくり訪れてみると良いかもしれませんね。

 


谷口菜穂子写真事務所
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