2018年明けましておめでとうございます。

 

 今回、長年使って痛んでいたお重を思い切って、女性蒔絵師の方に修繕して頂きました。

 きっかけは、去年のお正月に久々に遊びにきてくれた、ニューヨーク在住の、メイクアップアーティストで頑張ってる友達の言葉でした。

 「ナホさんが居なくなったら、このお重欲しい。継ぎたい」。
 お正月から縁起でもない話するなあ、と、ほかの人なら思うかもしれません。けれど、彼女のことは、彼女がヘアメイクの勉強をしながら悩み多き学生の頃から親しくしてて、言えば大事な妹分みたいなもの。今は遠く離れてなかなか会えないけれど、彼女が日本に居た頃は、毎年お盆とお正月はうちにご飯食べに来てたし、一緒に作品撮りなどしたり、本当に、書ききれないほどの色んな思い出があります。

 今は向こうで日本人のグラフィックデザイナーの男の子と結婚して、可愛い女の子も生まれました。仕事をバリバリこなしつつ、アメリカ暮らしの中で、より強く、日本の食べ物や、日本の暮らしについての意識も芽生えたようです。

 「アメリカで暮らしてる若い日本人の子達の方が、今じゃ日本に居る若い人らよりもおせち、作ってるんじゃないかなあ」。ちなみに、彼らが今使ってるお重は、日本に帰る際に譲られた友達からの陶器のお重だとのこと。

 お重、継いでもらえるんだ。そう思うと、とても嬉しくなりました。

 このお重。きっと、そんなに良いものでは無いとは思いますが、もう、私が小さい頃からは少なからず、お正月の中心に鎮座していました。そしてもう、私が小さい頃から、角と言う角の塗りが捲れて木地が見えていました。

 毎年それをみて父親は、「塗り物の扱いすら知らん」と、母親に嫌味を言って、聞いている私たち子供までバツが悪い気分がしました。両親が別れてからも父は毎年のお正月にそれを言いながら、「塗り物は浸け置きなんかしちゃいけない」と、扱いを教えるのです。よっぽど思い入れでもあるんやろな、と聞きながらのお正月。毎年、何か良いと思えるお重を新たに探しては、結局見つからずに恐る恐る、木地に食材の油や汁が触れないように気遣い、洗う際にも恐々洗って使っていました。

 そんな、思い出丸ごと詰まった、けれども見た目にはボロボロのお重を、継ぎたいと言う人が居てくれる。自分には、もう家族はありませんので、とても、嬉しかったのです。

 早速、蒔絵師の方を紹介してもらって、お重とにらめっこで診断待ちです。

 本当に治せるのかな、こんなになるまで放っておいてと怒られやしないかな、と内心ドキドキでした。まるで、病院の先生に診てもらうような気分です。そんな気分だから、なんとか助けてもらいたいとばかり、お重にまつわる思い出話とか、こんなボロボロのお重だと言うのに、友達がいつか継いでくれると言ってるんだとか、アメリカで暮らす若い日本人の子達は、向こうで結構頑張ってお節を作るらしいとか、亡き父もきっと、治ったら喜んでくれるだろうなとか、そんな、どうでも良いことを(多分)、脈略なく機関銃のように話し続けました。

 「なんとかなるでしょう」。そう、優しく言ってもらった際にもまた、とても嬉しい気持ちになりました。「何もかも取り除いて新品みたいに綺麗にすることも出来なくはないですが、そうではないですよね?」と言われたときには、ああ、この人はその加減すらわかってくれる人なんだと、とても信用が出来ました。

 そうです。新品にされては困るんです。なにせまた再び、普通に使えるよう、この風合いは大事にしてもらえたら良いんです。そう伝えると、「治ったらまたこれからは、普通に、普段も使ってあげてくださいね。使わずに大事にし過ぎても、艶が無くなったりするし、なにせ道具ですから、これからも大事に、使ってあげてください」と言われて、またその言葉にもとても、信頼感というものが生まれました。

 

 まあともあれ。そんなこんなの、2018年が始まりました。

 

 昨年には、また新たに、素敵な人たちともお出会いもありました。

 人に励まされたり、人に優しさを貰ったり、人に勇気を貰ったりして、新しい1年を迎えました。

 「承認欲求」なんて言うと、なんだかこ狭いお話になって全然面白くないですが、やっぱり、自分がいいな、これは大事にしたいな、と思えるものが、また人と共感し合えると言う毎日は、ささやかかもしれませんが本当に、幸せな気持ちになります。

 これからも、古いもの、新しいもの、普通のこと、人、日々、暮らしを大切に、丁寧に、生きていけたらいいなと思っています。

 

 さて。そんな最後の一コマですが、今年のおせちの卵料理は、錦卵以外に伊達巻を作るのはやめて、京都は太秦にある、出汁巻き一本勝負の「玉藤」さんの出汁巻きを注文してみましたよ。こんなにも澄んだ、卵とお出汁の風味と香りしかしない美味しい出汁巻きは初めて食べました。ああ。また誰かに伝えたい。

 

 今年もどうぞ、

古くからのお友達の皆様。これからもよろしくお願いします。

そしてまた、新たに出会ったお友達の皆様。これからもよろしくお願いします。