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古いもん旨いもんええもん鹿児島。


 今年はありがたい事に2回目の鹿児島出張。

 前回はスケジュールの都合上、前乗りが出来なかったので、今回は前乗りして、鹿児島空港から車で約20分ほどの親の実家まで。まずは御墓参りからスタート。
 日本で一番切り花の消費金額が高いのがここ、鹿児島県なのだそうだが、多分、用途の一番は御墓のお供え用なんじゃないかと思う。通りすがりの墓地はどこも、定番の菊は勿論だが、それ以外の華やかなお花もたくさんお供えされていて、とてもカラフルで賑やかだ。また、古い家々も庭先でたくさんお花を育てていて、これもきっとお供え用なんだと思う。
 親の実家は、裏山に実質谷口さんばかりが眠る墓地があって、古くてお名前の読めないものから新しいものまで、山を切り開いた一角にずらりとある。日当たりも良くて程よく木々に囲まれて、普段遠く思い浮かべてもほっこり、気持ちが落ち着く素敵な環境だ。
 途中、スーパーでお花をたくさん買ってお供えするけど、まず大抵足りない。と、言っても、御墓参りに寄るよ、なんて事前に言わずにひょっこり立ち寄っても、毎回叔父さんが掃き清めて、山中なのに雑草も無く、生き生きとしたお花がお供えされてある。よって、既にお供えされたお花の脇に追い足す。
 本当に、ありがたい事だ。長男というのに故郷から出て実家の世話を任せっきりだった父親だが、こうして本人希望の通り鹿児島にお墓を作らせてもらって、お世話してもらって、お父さんは幸せだ。

 お墓から下りて、叔父さん家にお土産を持っていくと、庭先に新顔の豆柴「そら」ちゃんが後ろ足で立って「ちょうだいちょうだい」でお出迎えしてくれた。スーパーで買ったワンちゃん用のおやつをぽいぽいあげて、とても喜んでくれる。長年、癒しキャラだった「はな」ちゃんは今年3月に17歳で天国へ旅立ったそうだ。またこうして懐っこい良い子が来てくれて良かった。叔父さん曰く「誰にでもこうよ。番犬になんか全然ならん」と笑った。

 


 泊まりの鹿児島市内にまっすぐ行くには時間的にちょっともったいない。去年、同じ霧島市にある鹿児島県内の現存する木造駅舎「嘉例川駅」を訪ねてそのいでたちが素晴らしかったので、同じく県内最古の「大隅横川駅」へ足を伸ばす。
 明治36年開業で国の登録有形文化財指定を受けている大隅横川駅は、嘉例川駅と共に、戦前から戦後の旧国鉄時代に主要な交通手段の拠点として栄えたそうだが、昭和60年代後半には無人駅となったそう。
 ホームの柱には戦時中の機銃掃射の弾痕が残っている。

 


 この横川というエリアには、駅舎の他にあと2つ(住居と蔵も入れると合計4つ)、登録有形文化財が隣接されているとネットで知り、ちょっと散策してみる事にした。

 一つは「池田家住宅主屋」とその隣の「池田家住宅石倉」。もう一つは「森山家住宅石倉」だ。
 商家の繁栄ぶりを物語る建物だが、その昔、この辺りはかつて、「山々野金山」と呼ばれる金鉱山があったそうで、1943年に事実上閉山以降は、農業が主産業になったのだと言う。

 昭和の頃はきっと栄えていたんだろうな、と偲ばれる建屋や、かつて賑やかだったんだろうな、と言う商店街もひっそり。ちょっとカラーリングや趣きがユニークな建物があちこちあったので、以下、文化財建屋もないまぜにスナップしてみた。


 一路、鹿児島市内へ移動。泊まりは天文館エリア。
 何回来ても、良いな、と思える鹿児島県内一大繁華街。路面電車の走る街並みって、ほんとに好き。
 近年泊まりは「ワシントンホテルプラザ」が続いているが、ここの朝食バイキングの16階レストランからは、錦江湾に浮かぶ桜島が一望出来る。今回、朝出発が早くて6時半から朝食を頂いたが、なんと桜島から朝日が上るのを初めて見る事が出来た。1日目は寝ぼけ眼でカメラも持たずだったので、2日目はあいにくの曇り空だったがカメラでパチリ。
 ホールを仕切っているお母さんに尋ねると、8月が一番、桜島のちょうどてっぺんから日が上ると教わった。


 さて。ここからは今回の鹿児島の旨いもの備忘録。

 横川エリアの産直に立ち寄ると、めちゃくちゃ嬉しいのを見つけた。それがこの写真の「芋餅」!

 以前、父親が病床についた時、今は大阪で暮らす叔母さんが食欲をつけるのに「故郷の母の味」と、作って食べさせてくれた。
 蒸したサツマイモとお餅を合わせて練ってもう一度蒸す(確か)という、手間はかかるが材料的にはシンプルなおやつ。お餅よりも伸び切らないので歯切れも良く、お芋の自然の甘さに、きな粉を纏ってとても美味だ。もう、叔母さんもお年を召されたので「あれまた作って」とは気軽に言えず、レシピはもらったけどなんかね、誰かに作ってもらうと、嬉しさが倍になる素朴なものだから、結局今まで自分で作らないままでいた。
 産直に出入りしてる、誰かのお母さんが作った味。写真映えはしないけど。ほんと、めちゃくちゃ美味しい!


 鹿児島最終日は、飛行機の関係でちょっと時間があったので、クライアントの女子チームで仙巌園(磯庭園)エリアへ。
 ちょっと来ない間に、お土産売り場が増設されてたりして見栄えも良くなり、スターバックスの旗艦店なども相まって、いい感じで賑わいを見せていた。
 ここから見渡す錦江湾と桜島は、本当に素晴らしいって毎回思う。
 いつか。私に薩摩切子が買える勇気を与えて下さい(笑)と祈りながら、名残惜しい時間を過ごした。

 また是非呼んでください。鹿児島!


谷口菜穂子写真事務所
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