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東福寺の吹き寄せ

 

うちの小さな庭の意図せぬ場所に、数本の紅葉がある。いずれもほんの数年の樹齢だが、いざ抜いてみよう、別の場所に移植しようと掘ってみても完全に根付いてしまっている。石川の家に移植したいのにな。私の見立てでは近所の東福寺の紅葉の種が飛んできたものだと思っているので、ミニ東福寺と密かに呼んでいる。


見頃を迎えたと言われるが、まだ青葉もあったりそのまま枯れてしまいそうな雰囲気もあったりの今年の東福寺の紅葉。
「女心と秋の空」を絵に描いたような今日。曇ったり、晴れたり、風が強く吹いたり、雨がパラついたりして、滲み入りますな、更年期には。
近所散歩でもう一年経ったのかと呟く。変わったのは出店の数が増えたのと、団体観光客が増えたのと。
嵐山や嵯峨野、岡崎辺りは今頃きっと、大変なことになってるんだろう。東福寺はまだマシ。他に流れるとして泉涌寺も伏見稲荷も間があって人は拡散するし、東福寺自体、塔頭寺院も含めたら境内は広く、そしてほとんどの人は同じエリア、フォトスポットに集中する。そこからちょっと逸れると、落ち葉の吹き寄せに小さな京都の秋が存在する。
もう、説明写真なんか要らないよと自分に言い聞かせてみる。良いなと思った所だけ。京都の中でも好きな所だけ、手元に残せたら。

家から一番近い南側の山門両脇には、季節を迎えると萩の花が美しく咲く。萩は調べるに花が終わったら株元まで剪定すると書かれていて、そう言えば、季節が変わると忘れてしまう存在に、今どうしてるだろうと花跡を見たら、ちゃあんとしっかり株元まで強剪定してあった。さすがお寺。
昨年の春先に植えた石川の家の萩一株も、この秋大きく育って見事に咲いてくれて未だ整え途中の庭を彩り帰路を惜しんだ。近々行って、しっかり剪定しようと思い出した。来年のために。

谷口菜穂子写真事務所
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