
「SNSの長文はもうええわ。それより家族の話がほんまに上手く一冊分まとめ上げられたら、絶対に直木賞取れる。けど、あんたはそれを書き終えたら精魂尽き果てるやろな。で、僕はその本の印税で悠々自適の余生を過ごすねん」と、ある日唐突におツレが言いがかってきました。
「なんやそれ(笑)私なんも得無いやんか。で、あんたはそれまで何してくれるねん」と尋ねると「僕は時々書きかけを読んでは、目一杯褒めちぎって応援」と満面の笑み。なんとも老獪な編集者にでもなるつもりらしい。
そんな、幻の一冊の中でも重要な登場人物である一人が、先日人生の幕を閉じました。
私の文章能力ではとても書けそうも無く、細かな過去を掘り下げ見つめ直す作業というのは、確かに精魂尽き果てるだろうは言い得て妙です。まだまだやりたい事もいっぱいあるし、過ぎた事は忘れてしまいたい逃避願望がつい起動します。
ただ一方で、書くことの治癒力や、俯瞰で眺めてユーモアを保ち、どんな事に対峙しても「この経験はオイしい」と心の何処かでメモる事も、これからを生きる為の必要な術と感じてもいます。
ともあれ。
いずれ来たると想像しながらも、思いがけないタイミングではありました。
その副産物というか、医療・福祉従事者の皆さんのさりげなく深い人間愛や、かつて共に同じ景色を見て来た兄貴が今もただ居てくれるだけの安心感、そしていとこや友人からの思いやりに触れる事が出来、その人肌な温かさに感動し、まさか泣くことが出来ました。
人間って、生きてるって、やはりやっぱりありがたい事なんだと思います。合掌。
