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1時間半だけ京大生

 

 やっとこさで念願叶い、「京大変人講座」(京都大学に連綿と受け継がれている「自由の学風」、「変人のDNA」を世に広く知ってもらうために開催している、ナビゲーターの越前屋俵太さんによって進行する公開講座)を受講してきました。

 

 関西人なら皆大好き(?)越前屋俵太さんによる絶妙な間の手によって進められ、今回のゲスト講師の齋藤亜矢・京都芸術大学教授(京大理学部、医学研究科修士課程を経て、東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了という稀な経歴にして現在は芸術認知科学を専門とする旧石器時代の洞窟壁画やチンパンジーとヒトが描く絵の比較などから、芸術の起源を研究)による「チンパンジーはなぜ絵を描くのか?! ~芸術認知科学からみたアートの起源~」が今回のお題。

アートの起源とされる4万5000年前のインドネシアで発見された洞窟壁画から、ヒトとDNA型が僅か1.2%しか違わない、最も近い存在であるチンパンジーの作画について、また、人間の幼児期に描く絵画の変成とその後の研究考察など、目から鱗なお話の連打で、めっちゃくちゃ、知的好奇心を揺さぶられて大変面白かったです。

 

 特に、

①いわゆる古代壁画に残る人類による動物の絵については、実写を見たことのない我々にとっては二次元情報であり、ああ、そんな昔からヒトは絵を描いたんだね、で終わっていたことが、「何故、彼らは絵を描いたのか」についての研究という眼差しによって、実際の洞窟の動画で様子を見てとると、洞窟内の隆起やクラックを実際の動物の形や肉付きなどに見立てて描いていたこと(つまりゼロ発想でなく、実際に見たことのある動物を、その背景に準えて見立てにより描いていたこと)も興味深かった。

②チンパンジーは、たとえば餌(ご褒美)という対価があることで何がしかを描いたり演技をするその他の動物(例えば象など)とは異なり、ただ、本人が動作として(プロセス)、他者の評価のあるなしに関係なく絵を描くことが好きであり熱中すること、そしてその絵には個体によってそれぞれ完全に見分けられるほど画風が存在すること(ただし、その画風はそれぞれに抽象画。具象は全く無い)。

③チンパンジーの、ただただ描きたい動作により描く行為は、人間の一歳から二歳児程度の画風に見られ、加えてヒトの場合は知識が増えるごとに構成要素とシンボルが増える=これらは言語が爆発的に増えることで抽象表現から具現化に移行する→見立てによる表現を得意としてゆく。

④これは翻って、あくまで講座では明言されていなかったものの、より、アーティストたるものは、チンパンジー然としていて、表現の本質はまさに面白さへのプロセス(探求)であり、その作品がその後に誰に評価され、またその評価される事を意図してはいないに等しく、逆にイメージの共有を探求しうる者はよりヒト的である、という枝分かれ。

 

 という、うーん。。。こうして言語化しても、人にとっては訳分からん講座かもしれませんが、受講した人(当日約200名以上)にとってはめちゃくちゃ面白い内容で、終始笑いとどよめき、感嘆の声が飛び交い、その後、お誘いした仕事仲間と近所の居酒屋で随分議論の花が咲いた、実に面白い時間でありました(本当は講義終了後のオフ会的「変人バー」も参加したかったけれど、あと数回講義を受けて、しっかり変人になってから参戦したい)。

 

 今回受講した建物(京都大学国際科学イノベーション棟HORIBAシンポジウムホール。京大の時計台の東側)は、昔の京大のイメージではビックリするくらい現代的な建物でしたが、個人的に、関西人にして、その中でも京都を愛してやまない者としては、そうなんです、こういう所が実はとても京都らしくてすごい好きな所で、なかなか人と共有できないけど、もしも共有出来たらすごい仲良しになれる、という、奥まった魅惑の時間を過ごすことが出来ました。

 

 あーしかし、京都の夜の、しかも大学構内の暗いことと言ったら笑。学問おばけがいっぱい居るんだろうな。それも含めて。

 どーでも良いと思われがちなことを、いやどーでも良く無いぞと密やかにとことん真剣に突き詰める。そして議論する。

 これぞビバ!変人。

谷口菜穂子写真事務所
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