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大人になるのも悪く無い。

週末から唐津に居ます。
昨年の秋にこちらを訪れた時に連れられた飲み屋にて、そこで夜な夜な集まる兄さん達が毎年の夏に開催している音楽フェスの話を聞いた。
「来年、予算ついたら写真とってくれんね?」と言われたので「是非是非!」と返したものの、まあ、飲み屋での話だものな、と、誘ってもらえただけで良しとして、しばらくしておおよそ忘れかけていた約束話だった。
自分達のような仕事はケセラセラ的、一期一会的なもので、割と具体的な内容のものでも実現されない事も多い。だから、声を掛けてもらえるだけで嬉しいし、逆にそれが叶わなくてもさらりと忘れてしまう構造が既に構築されている。だから、まず「無理だろうなあ」とタッチで分かるもので、それが本当に叶うと嬉しさは余計に倍増する。ふと今回のような事に出会う時、そう言えば約束が消えてしまう度にぐずぐずしてた子供の頃なんかに比べると「大人になるってのも、なんだか悪い事ばかりじゃ無いなあ」なんて思う。
さあ。
昨日のフェスはとっても素敵だった。
このイベントの主旨は、出来るだけ地元のバンドが出演する、地元の若いもんに出来るだけ音楽に触れさせたい、というアツい思いが込められているから、そのエリアの音楽性というか、オリジナリティーみたいなものが更によく聴き取れる。ローカルなものにどんどん引き寄せられる自分にとっては、目の前は波戸岬、ボリュームめいっぱいの音楽、大人からちびっこまで楽しんでる、という光景にすっかりやられてしまった。
で、極めつけは俳優の白竜さんの弾き語り!
佐賀県伊万里出身の白竜さんは、今回のフェス主催者がその昔に付き人をやっていた、という理由でこの、たまらなく地元なイベントに出演された、という経緯だそうだ。まあなんとも義理堅い、なんてアツい人なんだ・・・と、これまたすっかりやられた。
俳優になる前は歌手でらしたんですね。でも、今でもギターも歌も、もの凄い上手い。カラオケボーカルなんかじゃない腹で、自身のアイデンティティーを謳ったアリランへの思いを綴った曲(『逆流』というタイトルの、自身の見た事も無い故郷へ、住所片手に訪ねるというストーリーの楽曲。)に思わず泣けた。
と、言う訳でこの佐賀で確信したのは、
「かっこいい大人にならなきゃな」という事である。
大人がそうなら、きっと下はそこを目がけて歩いていけるんじゃないかな、と。
ああ。あと数時間後には後にする佐賀。
昨日の打ち上げの酒も、いい感じで残っています。

谷口菜穂子写真事務所
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