没後40年にあたる昨年より、京都から始まった鴨居玲の巡回展。そのフィナーレを飾る、作家の生まれ育った場所、金沢市にある県立美術館で開催されていた「没後40年 鴨居玲展ー見えないものを描くー」(3月15日迄)の会期ギリギリに間に合うことができました。
想像していたよりも大きな作品が多く、百貨店ギャラリー(スタートの京都展は百貨店だった)では無くやはり、天井の高い、それだけで抜け感がまるで違う美術館という空間で観れたこと、北陸に進めば進む程に降り出しそうな空模様と、いよいよ美術館に着いた頃にはボタボタと、不規則で重い雨が降り出した事、何より作家の生誕地で観ることがまるで序章のようで、とても素晴らしかったと同時に、命を削って研ぎ澄ました先の、あるいはプロセスたる作品の数々に圧倒され、その後しばらくどうやって一方の現実社会と折り合いがつけられるか、途方に暮れました。
鴨居玲にとって「写実」とは、現実をありのままに描くのでなく「見えないもの」を表現するとの事が記されていましたが、それは言い換えれば普段私たちが無意識的に(一般社会に適合し、生きながらえるための知恵か)自己との対峙を避けてしまったり、現実社会に目を向けることに対して「見たくないもの」としてすぐさま追いやってしまっているというだけで、鴨居玲にとっては実際に「見えているもの(見えざるを得ないもの)」あるいは「目が留まってやまないもの」だったんじゃないか。それらを平面で区切りフォーカスされる事で、私たちは「本当のこと」を否応なく直視させられるんだと感じてやみませんでした。
その作品群のおおよそは特に、朱赤気味、あるいは対極に紫や茶、黒がかった複雑な赤が特に印象的ですが、ベース自体もいったんは全体に内なる赤が塗られているそうです。
個人的には石川という土地には、その気候風土や歴史的背景も相まってなのか、内省的な探求に耽る文化人が幾人もおられる印象があります。
これまでの人生、その核心部を意図的に避けてきた事を心底で認識している自分としては、今後残りの人生をいかに生きるか、胸ぐらを静かに掴まれ揺さぶられながら問われているのような、そんな心地がしています。
